私だけの体験 第1話 

 第1話は、水晶の体験か、お盆に見た生々しい女性の幽霊のどちらにしようか迷う。

 とりあえず、女性の幽霊の方は私にとってそれほどインパクトがない体験なので、第2話に記そうと思う。

 

 小学校高学年か中学1年生の頃か、記憶が定かでないが、何かの用事の帰りに、一戸建ての石屋へ行った。母親は車から降りるまで時間がかかる人なので、私が先に1人で店に入った。その石屋は朗らかで暖かい雰囲気で、オシャレな店だった。女性の店員が2人いて、どちらも若い女性で、好きでお店をやって、楽しんでいるという感じだ。客である私にあまり構うことなく、他の先客の相談に乗っていたと思う。私は買い物する時、1人で静かに物を見たいタイプなので、居心地は悪くなかったと感じていたと思う。一戸建ての店ということもあり、さまざまな天然石がぎっしりと詰まって展示されていた。石屋に行くと、よく見かけるタイプの光景だ。(ありすぎて、ただの商品にしか見えないやつ、、、)

 その中で、入店してからすぐ、一際惹かれる水晶があった。透明の水晶で、両手に治るほどの大きさのものである。惹かれるといっても、『あの服可愛いー!』ということではなく、いつの間にか無意識に左手を伸ばしているという感じだ。その瞬間、周りの風景はただの風景であり、水晶と私だけの空間ができていた。

 指が水晶に触れると、今まで体験したことのない、これからも人が体験することのないであろう衝撃を全身で感じた。なんと例えればいいのかわからないが、言語化するなら、頭のてっぺんからつま先まで稲妻が走るような感じだろうか?(実際には頭のてっぺんからつま先ではなかった。)しかし、電流が流れるというような感じでもなく、生姜湯を飲んだ時のイメージというか、、、スパイスを帯びていて、やや暖かい感じ?

 その衝撃を感じて、自分の意識がはっきりすると、反射で指を離した。その時は、奴は自分自身と同じ、ドッペルゲンガーだと感じたが、指を離したあとは、ただただその存在が恐ろしかった。奴は私と一体化になることを望んで見つめているようで、私は持って帰った方が良いのかもしれないなと思いつつ、自分の存在が二つあるのは不気味だし、なんとなくお互い近くにいない方が良いと思い、その場を立ち去ろうとした。その頃に母親は店に入ってきた。

 母親には、もう帰るのかと驚かれたが、無機質な物に肉体的な生々しさ、それも自分自身の化身のような存在が目の前にいたら、誰でもその場を立ち去りたくなるだろう。母親は私が時々不思議な体験をすることを知っていたので、私は今あったことをここで話した。すると、母親は店員にそのようなことはよくあるのかと、尋ねた。店員は驚いた表情をし、すぐに不気味そうに苦笑いして感情を抑える努力をしていた。『いや、そういったことはないですけど・・・』と店員は返答していた。私は当たり前だろと思った。そんなことを誰でも彼でも体験していたら、もっと話題になっていると思う。店を出て帰った。